
2013年5月29日に日本でレビュー済み
日本史上の「敗者」たちに焦点をあて、その敗北を「必然」と切り捨てることなく、
失われた可能性の一つとして再評価しようという「敗者の日本史」シリーズの一冊。
本書が取り上げるのは奈良時代末期の女帝、称徳と、彼女の寵愛を恃み、
皇位を狙った大悪人とされる僧、弓削道鏡の二人です。
奈良朝では皇位をめぐる争いが繰り返された、と著者はいいます。
橘奈良麻呂の未遂に終わったクーデタ、長屋王をはじめとする皇族の失脚、
また最高実力者の藤原仲麻呂が反乱を起こし敗死するといった事件すら起こります。
この奈良朝の争いの原因について、著者は「草壁皇統」意識にあるとします。
草壁皇子は天武天皇と持統天皇の子で、母に鍾愛され天武の皇太子となりましたが、
即位前に亡くなっています。草壁死後に即位した持統は皇位を嫡系相承、
すなわち草壁直系に限るとした皇位継承法を持ち出します。
しかし、中継ぎの女帝を二人までいれて即位させた草壁の孫の聖武天皇は皇子を喪い、
称徳は草壁皇統のラスト・エンペラーとなります。
女帝は、草壁皇統の嫡系であることを強く意識していました。
また、道鏡という精神面と宗教界でのパートナを得た称徳は、
父聖武天皇と同様に仏法を重視し、神が仏法を守護する神仏習合を打ち出しました。
そして同じ時期に「神仏習合の先鞭をつけた神社」
とされる宇佐八幡宮が天神地祇の頂点に立ち、あの「宇佐神託事件」が起こるのです。
称徳没後、いったん天武系の仏教重視の政策は全否定されます。
しかし、出家した天皇の姿は後の太上法皇の趨りであり、
中世の神道は、再び神仏が習合した形で展開されます。
奈良朝の矛盾を一身に集めた称徳と彼女が帰依した道鏡。
意外なことに、二人は後世に大きな影響を残しているようです。
敗者の日本史 (2) (敗者の日本史 2) | 瀧浪 貞子 |本 | 通販 | Amazonレビューより
失われた可能性の一つとして再評価しようという「敗者の日本史」シリーズの一冊。
本書が取り上げるのは奈良時代末期の女帝、称徳と、彼女の寵愛を恃み、
皇位を狙った大悪人とされる僧、弓削道鏡の二人です。
奈良朝では皇位をめぐる争いが繰り返された、と著者はいいます。
橘奈良麻呂の未遂に終わったクーデタ、長屋王をはじめとする皇族の失脚、
また最高実力者の藤原仲麻呂が反乱を起こし敗死するといった事件すら起こります。
この奈良朝の争いの原因について、著者は「草壁皇統」意識にあるとします。
草壁皇子は天武天皇と持統天皇の子で、母に鍾愛され天武の皇太子となりましたが、
即位前に亡くなっています。草壁死後に即位した持統は皇位を嫡系相承、
すなわち草壁直系に限るとした皇位継承法を持ち出します。
しかし、中継ぎの女帝を二人までいれて即位させた草壁の孫の聖武天皇は皇子を喪い、
称徳は草壁皇統のラスト・エンペラーとなります。
女帝は、草壁皇統の嫡系であることを強く意識していました。
また、道鏡という精神面と宗教界でのパートナを得た称徳は、
父聖武天皇と同様に仏法を重視し、神が仏法を守護する神仏習合を打ち出しました。
そして同じ時期に「神仏習合の先鞭をつけた神社」
とされる宇佐八幡宮が天神地祇の頂点に立ち、あの「宇佐神託事件」が起こるのです。
称徳没後、いったん天武系の仏教重視の政策は全否定されます。
しかし、出家した天皇の姿は後の太上法皇の趨りであり、
中世の神道は、再び神仏が習合した形で展開されます。
奈良朝の矛盾を一身に集めた称徳と彼女が帰依した道鏡。
意外なことに、二人は後世に大きな影響を残しているようです。
敗者の日本史 (2) (敗者の日本史 2) | 瀧浪 貞子 |本 | 通販 | Amazonレビューより
